上着の袖に腕を通すとき、肩に鋭い痛みが走る。夜、寝返りを打つたびに肩がうずいて目が覚める。四十代から六十代にかけて、こうした症状から「五十肩かもしれない」と感じる方は少なくありません。この記事では、肩こりとの違い、自分で確かめられる動き、似ている別の病気、痛みがある間の過ごし方を、理学療法士の立場から整理します。

五十肩と肩こりの違い

五十肩は、医学的には肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん・肩の関節を包む袋や周りの組織に炎症が起きた状態)と呼ばれます。一方の肩こりは、首から肩にかけての筋肉が張ったり重くなったりする状態です。どちらも「肩が痛い」と表現されますが、起きている場所が違います。

比べる点肩こり五十肩
痛む場所首の付け根から肩の上肩の前や外側、腕の付け根
腕の動き上がるが重い痛みや硬さで途中から上がらない
夜の痛み少ない寝返りや横向きでうずくことがある
始まり方疲れや姿勢で波があるある時期から徐々に強くなる

痛む場所と動かせる範囲

肩こりでは、首の付け根から肩の上にかけて重さや張りを感じます。腕を上げると重さは増しますが、動かせる範囲そのものは保たれていることがほとんどです。

五十肩では、肩の前や外側、二の腕の付け根あたりが痛みます。腕を上げていくと、ある角度で痛みが走り、それ以上は上がらなくなります。重いのではなく、関節そのものが動かなくなるのが特徴です。

夜にうずくかどうか

五十肩で多くの方が困るのが、夜の痛みです。横向きに寝ると肩が圧迫され、仰向けでも腕の重さで関節が引っぱられて痛みが出ます。肩こりで夜中に目が覚めるほどの痛みが出ることは多くありません。夜の痛みがある場合は、筋肉の張りだけでなく、関節の中で炎症が起きている可能性を考える必要があります。

肩こりが起きる仕組みそのものについては、肩こりが揉んでも戻る理由と対策で詳しく解説しています。

自分で確かめる三つの動き

ここで紹介する動きは、診断のためのものではありません。受診のときに医師へ症状を伝えやすくするための確認です。痛みが強く出る場合は、無理に続けず途中でやめてください。

背中で手を組む・髪を結ぶ

手を腰の後ろに回して、背中のどこまで届くかを左右で比べます。次に、手を頭の後ろに回して、髪を結ぶような動きをしてみます。五十肩では、腕を外にひねる動きと内にひねる動きの両方が硬くなりやすく、エプロンのひもを結ぶ、髪を整えるといった日常の動作から不便が出てきます。

痛む側だけ手の届く位置が明らかに低い場合は、肩の関節の動きが狭くなっているサインと考えられます。

自分で上げる・人に上げてもらう

まず自分の力で腕を前から上げ、どこまで上がるかを確かめます。次に、家族に腕を支えてもらい、力を抜いた状態でゆっくり上げてもらいます。

自分では上がらないのに、人に支えてもらうと上がる場合は、腕を持ち上げる筋肉や腱の働きに問題がある可能性があります。どちらの方法でも同じところで止まる場合は、関節そのものが硬くなっている可能性があります。この違いは、医師に伝えるととても役立つ情報です。

首を動かすと腕に響くか

顔をゆっくり上に向ける、痛む側へ首を倒す。このときに肩から腕にかけて痛みやしびれが走る場合は、肩ではなく首の神経が関わっている可能性があります。肩を動かしたときではなく、首を動かしたときに症状が出るかどうかが見分けるときの手がかりです。

五十肩と似ている別の病気

「肩が上がらない、痛い」という症状は、五十肩だけで起きるものではありません。中には、早めに医療機関で対応したほうがよい病気もあります。五十肩だと思い込んで様子を見続けないことが大切です。

腱板断裂:自分では上がらない

肩の奥には、腕の骨を関節に引きつけて支える四つの筋肉があり、その腱の集まりを腱板(けんばん)と呼びます。この腱が切れた状態が腱板断裂です。転んで手をついた、重いものを持ち上げたといったきっかけで起きることもあれば、年齢とともに腱がすり減って、きっかけなく起きることもあります。

特徴は、先ほどの確認で、自分では上がらないのに人に支えてもらうと上がることです。上げた腕を途中で支えられずに落ちてしまう場合もあります。五十肩と違い、時間がたっても切れた腱は元に戻らないため、医療機関での判断が欠かせません。

石灰沈着性腱板炎:急な激痛

腱板の中にカルシウムの結晶がたまり、強い炎症を起こす病気です。ある日突然、夜も眠れないほどの激しい痛みが出て、腕をまったく動かせなくなることがあります。五十肩が少しずつ強くなっていくのに対し、こちらは急に始まる点が大きな違いです。レントゲンで確認できるため、急な強い痛みのときは早めに受診してください。

首から来る痛み・しびれ

首の骨の間から出る神経が圧迫されると、肩や腕、手に痛みやしびれが出ます。肩そのものには問題がないため、肩を休めても症状は変わりません。指先まで響くしびれや、手に力が入りにくい症状がある場合は、首の状態を確かめる必要があります。

次のような場合は、運動の前に医療機関へ相談してください。

  • 転んでから腕が上がらない
  • 突然、激しい痛みが出た
  • 腕や手にしびれや脱力がある
  • 発熱や肩の赤み・腫れがある
  • 安静にしていても強く痛む

肩の痛みの原因は、関節・腱・神経・内臓など幅広くあります。当店は医療機関ではないため、診断や治療を行うことはできません。

理学療法士の視点:肩は四つの関節で動く

腕を真上まで上げる動きは、肩の関節ひとつで行っているわけではありません。腕の骨と肩甲骨の関節、肩甲骨と鎖骨の関節、鎖骨と胸の骨の関節、そして肩甲骨が肋骨の上を滑る動き。この四つが連動して、はじめて腕は耳の横まで上がります。

肩甲骨と腕の二対一のリズム

腕を上げるとき、腕の骨が肩甲骨に対して動く角度と、肩甲骨自体が回る角度には、おおよそ二対一の比率があるとされています。腕を百八十度上げるうち、およそ百二十度を肩の関節が、六十度を肩甲骨の動きが受け持つという考え方です。これを肩甲上腕リズム(けんこうじょうわんりずむ)と呼びます。

五十肩で肩の関節が硬くなると、この比率が崩れます。足りない分を肩甲骨や背骨が補おうとするため、肩の関節以外にも負担が広がっていきます。

すくめて上げるのは代償の動き

五十肩の方が腕を上げようとすると、肩をすくめるように持ち上げる動きがよく見られます。肩の関節が動かない分を、肩甲骨ごと引き上げて補っている状態です。こうした身体の工夫を、代償動作(だいしょうどうさ・本来の動きの代わりに別の部位が働くこと)と呼びます。

代償動作が続くと、首の付け根の筋肉が働き続け、肩こりのような張りも重なってきます。五十肩と肩こりが同時に起きているように感じるのは、このためです。鏡の前で腕を上げ、肩がすくんでいないかを見ると、自分の状態が分かりやすくなります。

時期によって動かし方が変わる

五十肩は、一般に三つの時期を経ると説明されます。痛みが強く夜もうずく時期、痛みは落ち着いてきたものの関節が硬くなる時期、少しずつ動ける範囲が戻っていく時期です。期間には個人差が大きく、数か月から一年以上かかる方もいます。

痛みが強い時期に無理に動かすと、炎症が長引くことがあります。一方で、硬くなる時期に動かさずにいると、動ける範囲が狭いまま残りやすくなります。同じ「動かす」でも、時期によって適切な量がまったく違うのです。どの時期かは医師の診察と経過で判断されるため、自己流で強く伸ばすのは避けてください。

痛みがある間にできること

肩そのものへの運動は、医師や理学療法士の指示に沿って行うのが基本です。そのうえで、日常生活で負担を減らす工夫と、肩以外の身体を保つことは自分でも取り組めます。

寝るときの腕の置き場所

仰向けで寝ると、腕の重さで肩が後ろに引っぱられ、痛みが出やすくなります。痛む側の肘の下に、たたんだタオルやクッションを置いて、腕が身体より少し前に来るようにしてみてください。横向きに寝る場合は、痛む側を上にして、抱き枕などで腕を支えると楽になる方が多くいらっしゃいます。

肩を使わずにできる運動

肩が痛いと、身体を動かすこと自体を控えてしまいがちです。けれど、動かない期間が長くなると、脚の力や体力が落ち、背中が丸くなって肩の動きにも影響します。歩くこと、椅子からの立ち座り、脚を使った運動は、肩を使わずに続けられます。

運動から遠ざかっていた方が身体を動かす習慣をつくるときは、運動初心者が最初の一か月で意識したいことも参考になります。

ジムで避けたい三つの動き

痛みがある間、ジムでは次の三つの動きを避けてください。一つ目は、バーベルやダンベルを頭の上へ持ち上げる動き。二つ目は、バーを首の後ろへ引く、肘を背中側へ大きく引くなど、腕を背中側へ持っていく動き。三つ目は、ベンチに寝てバーを胸の高さより深く下ろす動きです。いずれも、硬くなった関節を無理に広げる方向へ負担がかかります。

腰にも痛みがある方は、動きのタイプ別に見分ける腰痛のセルフケアで、避けたい動きを確認できます。

戸田公園駅の近くで肩の相談先を選ぶには

肩の痛みの相談先には、整形外科、整骨院、整体、ジムなど多くの選択肢があります。大切なのは、順番を間違えないことです。

まず整形外科、そのあとに運動

五十肩かもしれないと感じたら、最初の相談先は整形外科です。レントゲンや超音波などの検査で、腱板断裂や石灰沈着といった別の病気がないかを確かめてもらえます。そのうえで、どの程度まで動かしてよいかの見通しを聞いておくと、その後の運動を安全に組み立てやすくなります。施術と運動のどちらを選ぶか迷う方は、整体とパーソナルジムの違いを整理した記事も判断の材料になります。

肩以外を止めないという考え方

当店のトレーナーは全員が理学療法士で、病院でのリハビリの経験をもとに指導にあたっています。医療機関の受診を前提に、肩に負担をかけない種目で脚や体幹を保ち、痛みが落ち着いてきたら肩甲骨や背骨の動きから少しずつ整えていく。そうした進め方を、身体の状態を確かめながら一緒に組み立てます。

お客様の九割は運動初心者です。東口店と西口店は併用することができ、営業は七時から二十二時までです。店舗の場所や特徴は戸田公園のパーソナルジムLIMITEDのトップページにまとめています。

よくある質問

五十肩は、放っておいても大丈夫ですか?

時間とともに痛みが落ち着いていく方が多いとされていますが、動かせる範囲が狭いまま残る方もいます。また、腱板断裂など、似た症状の別の病気が隠れていることもあります。自己判断で様子を見続けず、まず整形外科で肩の状態を確かめてもらうことをおすすめします。

痛くても肩は動かしたほうがよいですか?

時期によって答えが変わります。痛みが強い時期に無理に動かすと、かえって痛みが長引くことがあります。一方で、痛みが落ち着いてきた時期は、動かさないままでいると硬さが残りやすくなります。どの時期にいるかは自分では判断しにくいため、医師や理学療法士に確認しながら進めてください。

五十肩でも、ジムに通えますか?

医師から運動の制限が出ていなければ、肩に負担をかけない内容で通うことはできます。脚やお尻、体幹のトレーニングは、肩を使わずに行える種目が多くあります。腕を頭の上に上げる動きや、背中側に腕を引く動きは避け、痛みが出ない範囲で組み立てることが大切です。

まとめ

五十肩は肩の関節そのものの問題で、首から肩の筋肉が張る肩こりとは起きている場所が違います。途中から腕が上がらない、夜にうずくといった症状があれば、背中で手を組む、人に腕を上げてもらうといった確認をしたうえで、まず整形外科を受診してください。腱板断裂など似た病気もあるため、自己判断で強く動かすのは避けましょう。

戸田公園駅の東口店・西口店では、理学療法士が肩の動きと身体全体の状態を確かめてから運動の内容を決めます。受診後の運動に不安がある方は、まず初回身体評価&体験でお気軽にご相談ください。